カレー食堂コモやん

統計と地域ブランドで見るカレー市場

お問い合わせはこちら ご購入はこちら

統計と地域ブランドで見るカレー市場

統計と地域ブランドで見るカレー市場

2026/10/18

日本では、家庭用のルー、レトルト食品、飲食店のメニュー、持ち帰り商品など、さまざまな形でカレーが提供されています。地域の食材を使った商品や、まちづくりと結びついた取り組みも見られます。

ただし、「カレー市場」という一つの数字が、これらをすべて表しているわけではありません。生産量、家計の支出、外食の売上、観光消費では、調査する対象と方法が異なるためです。

この記事では、公的統計や業界団体の資料を手がかりに、数字から分かることと、数字だけでは判断できないことを整理します。

目次

    1.「市場」は一つの数字では表せない

    料理に関係する市場には、複数の販売経路があります。

    スーパーなどで販売される家庭用ルーやレトルト食品、飲食店で提供される一皿、持ち帰りや宅配の商品は、それぞれ別の流通経路を持っています。地域イベントや観光施設で販売される商品もあります。

    このため、市場規模を検討するときは、何を集計した数字なのかを確かめる必要があります。

    たとえば、工場の生産量からは製造の規模を把握できますが、地域ごとの食べ方までは分かりません。家計の購入額からは家庭での支出傾向を確認できますが、飲食店での注文をすべて捉えられるわけではありません。

    異なる資料の数字を単純に合計すると、同じ商品を重複して数えたり、調査対象の違いを見落としたりする可能性があります。

    2.家庭用ルーとレトルト食品は分けて考える

    家庭用ルーは、肉や野菜などを用意して調理する商品です。一方、レトルト食品は、密封した容器に入れて加圧加熱殺菌した食品で、温めて食べられる商品が中心です。

    どちらも家庭で利用されますが、購入する目的は同じとは限りません。

    家族分をまとめて調理するときはルーが選ばれやすく、一人分を短時間で用意したいときにはレトルト商品が選択肢になります。ただし、実際の選び方は世帯人数、生活時間、価格、調理環境などによって変わります。

    日本缶詰びん詰レトルト食品協会の調査では、2024年のレトルトカレーの生産量は内容重量で16万1,227トンとされています。ただし、同協会は2024年から調査方法や対象品目を変更しています。そのため、以前の数値と比較するときは、統計上の条件が同じではないことに注意が必要です。

    また、農林水産省が実施していたカレー生産実績調査は、2008年度の調査を最後に終了しています。現在の市場を調べる場合は、資料の発行年と集計範囲を確認することが大切です。

    3.家計調査の地域ランキングで分かること

    総務省統計局の家計調査では、二人以上の世帯などを対象として、品目ごとの支出金額や購入数量が調べられています。

    都道府県庁所在市や政令指定都市については、品目別のランキングも公表されています。複数年の平均を使うことで、単年の偶然による変動をある程度抑えた結果も確認できます。

    ただし、このランキングは「都道府県全体の順位」ではありません。家計調査の標本数では、すべての都道府県について安定した結果を集計することが難しいため、都道府県別のデータは原則として公表されていません。

    支出金額が高い場合にも、いくつかの解釈が考えられます。

    購入回数が多い可能性もあれば、単価の高い商品が選ばれている可能性もあります。特売の時期、世帯構成、調査対象となった世帯の違いが影響することも考えられます。

    そのため、「支出額が高い都市ほど、その料理が好き」「順位が高い地域ほど辛い味を好む」とまでは判断できません。

    4.地域ブランドと地域の好みは同じではない

    ご当地商品や地域名を冠したメニューが知られていると、その地域の住民が日常的に同じものを食べているように見えることがあります。

    しかし、地域ブランドは、住民の食習慣をそのまま示すとは限りません。

    地域の歴史や食材を観光資源として紹介するため、行政、事業者、商店街などが協力して商品を開発する場合があります。観光客向けの商品と、家庭で普段食べられている料理が異なることもあります。

    したがって、地域商品を分析するときは、少なくとも次の点を分けて見る必要があります。

    • 家庭で日常的に食べられているもの
    • 飲食店が地域住民へ提供するもの
    • 観光客や贈答向けに開発されたもの
    • 行政や事業者が地域ブランドとして育てているもの

    これらを区別すると、その土地の食文化と販売戦略の関係が見えやすくなります。

    5.横須賀に見る「市場をつくる」取り組み

    神奈川県横須賀市は、1999年からカレーを活用したまちづくりに取り組んでいます。

    市の計画では、地域ブランドの認知度を高め、来訪や市内での消費につなげることが目標として示されています。これは、以前から存在した家庭料理を紹介するだけでなく、行政や事業者が協力して新しい市場を形成する取り組みと見ることができます。

    ここで注意したいのは、現在の商品やイベントの形が、そのまま明治期の料理を再現しているとは限らないことです。歴史資料を参考にしながら、現代の衛生基準、販売方法、消費者の好みに合わせて商品化されています。

    地域ブランドの価値は、起源の古さだけで決まるものではありません。どのような根拠で物語を示し、地域の事業者や住民が継続して関われる仕組みをつくるかも重要です。

    6.小規模店と地域商品が担う役割

    全国規模の統計では、小規模な専門店や地域限定商品の動きを細かく捉えられない場合があります。

    個人店では、地域の農産物や水産物を使った季節メニューが提供されることがあります。食品メーカーや自治体が、特産品を使ったレトルト商品を開発する事例も見られます。

    ただし、地域の食材を使っているというだけで、地域の伝統料理とは限りません。近年の観光振興や商品開発から生まれた場合もあります。

    伝統、日常食、地域振興商品を区別して紹介することで、その商品の成り立ちを正確に伝えられます。

    また、売上や来場者数が公表されていない事例については、「市場が拡大した」「地域経済を大きく変えた」と断定できません。確認できる範囲で、参加事業者、販売期間、商品の継続状況などを見る必要があります。

    7.コモやんの視点|数字と食文化を分けて見る

    ここからは、飲食店としてのコモやんの視点です。

    市場を考えるとき、私は売上の大きさだけでなく、お客様が何を基準に一皿を選んでいるかを見ることも大切だと考えています。

    辛さ、量、具材、価格、提供までの時間など、選択の理由は一つではありません。家族で食べる日と、一人で短時間に食べる日でも、選ばれる商品は変わるでしょう。

    一方、店頭で感じた傾向は、あくまで一つの店舗での観察です。それを日本全体の消費者傾向として扱うことはできません。店舗の経験と、公的な統計や広い範囲の調査は分けて考える必要があります。

    地域市場を理解するには、数字の順位だけを見るのではなく、その数字が何を測ったものかを確かめることが出発点です。

    家庭用商品、外食、地域ブランドは、それぞれ異なる背景を持っています。この違いを丁寧にたどることで、日本各地にある食文化と市場の関係が、より立体的に見えてくるでしょう。

    出典候補

    ・総務省統計局「家計調査」
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/

    ・総務省統計局「家計調査 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/rank/singleyear.html

    ・総務省統計局「都道府県別のデータはないのですか?」
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/search/before.htm

    ・公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会「国内生産数量統計」
    https://ns.jca-can.or.jp/data/jcadata.html

    ・公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会「生産量調査について」
    https://www.jca-can.or.jp/data/seisanchousa.html

    ・農林水産省「カレー生産実績調査」
    https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/curry/

    ・横須賀市「横須賀市観光立市推進アクションプラン2026-2029」
    https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2150/documents/actionplan20262029.pdf

    ※統計の数値は、調査対象、集計方法、対象期間によって異なります。引用するときは、資料名だけでなく対象年と集計範囲も併記してください。

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。